にった接骨院

新田!よくやった! 2025/01/09

新田です。
お正月から19年目となる、スキー場での怪我人救護活動が始まりました。
数えきれない程の怪我人を処置してきた中で、特に印象に残っている怪我人の処置をお話しします。

母親・父親・男の子の3人で、一泊二日のスキー旅行に来たお客様です。

ソリで遊んでいた時に、母親が子供の上に乗る形で転倒してしまいました。
母親はパニックになりながら救護室に駆け込み、男の子は尋常ではない程、肘を痛がり号泣していました。今まで見た事もない程の泣き方でした。

私は、洋服を脱がせ慎重に、患部の腫れ具合・顔色・会話の受け答え・痛みが増すポイントなど、あらゆる角度から徹底的に確認しました。もし骨折などの重症な場合、早急に医療機関を受診しなければなりません。

私は、肘内障(完全な脱臼ではなく、不完全な脱臼状態)の可能性が高いと判断。
肘内障は軽症な為、整復(外れた関節を元に戻す)をすれば痛みはその場で無くなり、それで終了です。

私は親御さんに肘内障の説明しましたが、あまりの痛がりように父親は「救急車を呼んで欲しい」と希望されました。
都会と違い病院が多くある訳ではありません。しかも日曜日の夕方という時間帯を考えると、近場で受け入れ可能な病院が見つかるどうか・・・・。
病院が見つかっても、そこから宿に到着するのは深夜になる事は間違いありません。
最悪、宿泊を断念するという選択肢は十分に考えられます。
せっかくのスキー旅行なのに・・・・。

親御さんの希望を尊重し、救急車を呼ぶことに。しかし、私はある決断をしました。

「救急車を呼ぶので、とりあえず洋服を着ちゃいましょう。」
痛がりながらも袖を通そうとする瞬間、私は素早く、そして周囲には絶対に分からない位の小さい動作で整復を試みました。その時、「コクッ」と音が。確かに関節がハマった感覚が指を通じて伝わってきました。

次の瞬間、泣き止み、腕を動かし始める男の子。
私はお父さんに「洋服に腕を通す時に、関節がハマったみたいです。やはり肘内障だったみたいです。もう、大丈夫です。」

母親は、安心したのか私に背中を向けて涙を流していました。そして、男の子は元気を取り戻し、笑顔で処置室を出ていきました。

私は帰りの高速道路を運転しながら、今頃温泉に入って美味しい食事を楽しんでいるかな。
そんな事を想像すると、自分事の様に嬉しくなったのを覚えています。
冷静な判断と適切な処置を行なった自分に酔いしれた帰り道でした。

しかし、絶対にバレない様に整復したつもりでしたが、パトロールの隊長から言われました。
「新田さん、わざと整復しましたね。」
やはり、経験豊富な隊長の目は誤魔化せませんでした・・・・。

最後に
「肘内障は決して重症な怪我ではありませんが、肘内障だと確信を持つことが非常に難しいのです」

 

 

 

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